自己凝集性を有する光合成細菌によるヘドロ処理および生分解性プラスチックへの変換を念頭におき、まず、ヘドロの化学分析を行った。ヘドロは、約5%の有機物と95%の砂からなり、多量のリンを含んでいた。ヘドロ200gを1lの人工海水にけん濁し、少量のビタミン液(B1、ニコチン酸、ビオチン)を添加し、30Cで7日間ほど嫌気消化を行うと、約2g/lの酢酸と20mg/lのリン酸イオンが脱離液中に溶出した。この脱離液に光合成細菌を接種し、30C、10kluxの光照射で培養したところ、3日で約3g/lの菌体が生成し、リン酸イオンもほぼ除去された。また、菌体内には最大62%(乾物量)のポリハイドロキシ酪酸(PHB)が蓄積され、このことから、嫌気消化と光合成細菌培養の組合せで、ヘドロの浄化とPHB生産が可能と思われた。 さらに、光を用いない好気条件で、ヘドロ脱離液の処理を行うため、新規の自己凝集性光合成細菌、Rhodovulum sp.を用いて、新規のSingle tower bioreactorシステムを開発し、高濃度培養をめざした。酢酸を炭素源としたモデル人工脱離液で高濃度培養を行ったところ、750時間で42.7g/lの最大菌体量に達し、PHBも好気培養にも関わらず約30%蓄積され、約13g/lにも達した。さらに、得られた培養工学的定数(酸素消費速度、基質消費速度)から、菌体およびPHB生産をコンピューターシミュレーションを行うと、実際の実験データとよく一致し、リアクター設計の基礎知見が得られた。 このように、自己凝集性光合成細菌により、ヘドロ浄化と生分解性ップラスチックの生産の可能性および実用性が明らかにされた。
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