研究概要 |
本研究の目的は、三成分溶媒系におけるpH依存相分離現象を利用する均一液液抽出法を前段濃縮法と見なし、各種機器分析法(蛍光X線法およびHPLC法など)との組み合わせによって新しい高性能分離・検出システムを開発することにある。本年度は、まず先に報告されているフッ素系界面活性剤の一つであるペルフルオロオクタン酸イオン(PFOA)を用いてPFOA/アセトン/H^+系における金属-デスフェリオキサミンB錯体の均一液液抽出法と蛍光X線分析法(XRF)への応用を検討した。その結果、この均一液液抽出法では最大5万倍の濃縮ができた。また、高原子価金属イオン{Ti(IV),V(V),Zr(IV),Nb(V),Ta(V)}の選択的濃縮分離と10^<-8>Mレベルの高原子価金属イオンのXRFによる同時定量法およびAl-Cu合金中におけるTi,Zr,Vの定量法を確立した。 次に、均一溶液のクロロホルム/酢酸/水三成分溶媒系において水酸化ナトリウムの添加によるpH依存相分離現象に関して各因子の最適化を行った。ピリジル基を有する合成ポルフィリン化合物{5,10,15,20-テトラキス(4-ピリジル)ポルフィン}が本系に適合したキレート試薬であることが分かった。この試薬を用いて銅(II)とパラジウム(II)の同時錯形成条件とそれぞれの均一液液抽出法における抽出挙動および抽出率を明らかにした。現在、全反射蛍光X線法による同時定量法{Cu(II)の検出限界:10^<-10>M,Pd(II)の検出限界:10^<-8>M}及び高速液体クロマトグラフィーへの応用等に関して研究が進行中である。
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