研究概要 |
本年度は、以下の三つの項目を中心に、本研究課題に対する検討を行なった。 (1)新しい均一液液抽出法の基礎となる相分離現像の探索:フッ素系界面活性剤(パ-フルオロスルホン酸)の対イオンとなる金属イオン(アルカリ・アルカリ土類・遷移金属等)の中では、特にカルシウムイオンのみがイオン対相分離現象によって液状析出相を生じた。この析出相が水分を多量に含有することから、本抽出法は、生体物質の抽出に適しており、ビタミンB_<12>等の濃縮・分離・回収法となることを提案した(日本化学会第72春季年会にて発表)。 (2)全反射蛍光X線分析法(TXRF)への応用:パ-フルオロオクタン酸のpH依存相分離現象に基づく均一液液抽出法をTXRFの前段濃縮法に応用した。酸による分解が困難な実試料は、溶融剤として用いる多量の炭酸ナトリウムの影響を受ける。本抽出法では、多量の溶融剤の影響を受けずに目的元素のみを数μLに濃縮できた。更に、セラミックスや黒鉛中に含まれる微量不純物元素(Fe,Ni,Cu等)をTXRFにより同時定量した(日本分析化学会第46年会にて発表)。 (3)高速液体クロマトグラフィーへの応用:水/酢酸/クロロホルム三成分系のpH依存相分離現象に基づく均一液液抽出法をHPLCの前段濃縮法に応用した。超高感度キレート試薬テトラキス(4-ピリジル)ポルフィンを用いて、これまでにポルフィリンを用いる同時定量が困難とされていたppbレベルの銅(II)とパラジウム(II)の吸光検出-HPLCを開発した。この中では、同時錯形成反応、均一液液抽出、HPLC条件等を詳細に検討した(日本化学会第73春季年会にて発表予定)。 以上、当初計画をしていた高性能分離・検出システムとして蛍光X線、全反射蛍光X線およびHPLCへの応用が実証され、十分な成果を挙げることができた。
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