超臨界流体は、密度の関数で表される溶媒特性が温度と圧力により容易に微調整できるという従来の液体溶媒にはない特異な性質を有している。本研究の目的は、このような超臨界流体を反応媒体として使用するとともに、濃縮や予備分離に用いることにより、迅速性と高い選択性を備えた新しい誘導体化法を開発することである。本年度は、主として固体触媒を充てんした容器を反応容器として用い、メチルエステル化を検討した。 1 超臨界流体を用いる誘導体化システムの構成とその基本特性の検討 本研究で必要とする次のような機能を有するシステムを開発し、その特性を確認した。圧力制御が可能なこと。二酸化炭素に添加溶媒あるいは反応試薬を様々な濃度で混合できること。試料は、溶液および固体として、また固相抽出カラムを用いて導入できること。反応および反応物の回収は、連続的および回分的に行えること。 2 カルボン酸のメチルエステル誘導化の最適化 二酸化炭素/メタノール混合液を用い、各種カルボン酸のメチルエステル化反応について、温度、圧力およびメタノール濃度の影響を詳細に検討した。触媒無しでも反応が進行することが確認できたが、触媒を使うことにより、迅速で定量的な誘導体化が可能となった。 3 水中のフェノキシ酢酸類への応用 本法の応用として、除草剤として使用されているフェノキシ酢酸類の水溶液からの分析を検討した。固相抽出カラムによる濃縮法と本反応システムを組み合わせることにより、環境規制値レベルでの分析を迅速に行うことが可能となった。
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