本研究は、表面光学定数分布のマイクロマッピングを行うための装置を開発し、実際に光触媒反応などの光誘起表面反応のその場観察に応用することを目指しており、そのために必要な理論的、実験的な基礎を固めることが目標である。昨年度の成果を基に本年度は以下の点について重点的に研究を行った。 1、表面光学定数マイクロマッピング測定システムの開発 研究初年度に中心周波数82MHzの光音響光学素子を用いて試作したプロトタイプシステムの光学系を用いて、本年度も引き続きプローブビーム走査系、光ビ-ト検出系の最適化のための検討を行った。その結果、システム応答の基礎特性および測定技術に関しての種々の知見を得ることができた。 2、マイクロ電極を用いる光触媒反応の局所観察 金属担持光触媒のモデルとして、TiO2薄膜上にPdを500μmの縞状に電析させたものを用い、7μm径のカーボンディスク微小電極を用いてEtOHなど光触媒反応のモニターを行い酸化還元各サイトの反応を独立に観察した。その結果、酸化側では水の酸化による酸素の生成だけでなく、生成した有機物のラジカルと溶存酸素との間でラジカル連鎖反応が進行することを実験的に始めて明らかにすることができた。この結果は、高効率の光触媒システムを構築する上で重要であるばかりでなく、本研究で開発を目指した実験手法による観測結果を解釈する上でも有用な表面近傍における物質輸送についての知見をもたらすものと考えられる。 3、鉄非線形電気化学振動子における反応伝搬の時空間発展 非線形振動している鉄電極表面の反応が作り出す時間-空間発展するパターンについて検討した。また、鉄振動子に電気抵抗を加えた時の時間域の振動現象と鉄電極表面反応の空間的な伝搬の相関について知見を得た。これをもとに、表面光学定数分布のマイクロマッピング法によるこの鉄電極表面の非線形電気化学反応に適応するための予備的な検討を行った。
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