導電性高分子であるポリアニリンを導電体化した状態で交流磁場中に置くと、誘導電流が発生することを見いだしたが、本年では磁場の強さ・磁場の周波数・導電性高分子膜の厚さ・ド-ピング量・溶液のpH・電極電位等が誘導電流の大きさと位相差に与える影響、および温度変化を測定した。電解セルの入るような幾つかの容量の異なるコイルおよびその電源を準備した。ドーパントの物質移動が律速にならないようにするため、1M硫酸溶液中のポリアニリン膜を用いた。また、ポリチオフェンも用いた。ポリアニリンをセットした状態で、膜付近の磁束密度を微小コイルを用いて測定した。膜に定電位をかけて準平衡に達した後に、外部磁場の強さ・周波数を変えながら膜に発生した誘電電流を測定した。データの再現性が得にくいため、磁気のシールに多くの時間を費やした。より明瞭なじき請うかを出すためには、交流磁場の振幅を上げる必要がある。しかしながら現在のところ、それなりの結果が得られ、考察に励んでいるところである。この新しい現象の説明として、フラクタル性のある分子状コイルから生じるインダクタンス、およびイオン性溶液/導電体界面に形成される電気二重層容量であると考えているが、未だにあいまいなところが多く、結論を出すには時期早急と考えている。
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