研究概要 |
導電性高分子であるポリアニリンを導電体化した状態で交流磁場中に置くと、誘導電流が発生することを見いだした。絶縁状態では誘導電流はまったく観測されず、導電体/絶縁体変換の閾値電位において急激に誘導電流が増加したとを考えると、従来の電気化学におけるローレンツ力による磁場効果とは本質的に異なることが分かる。この新しい現象の説明として、フラクタル性のある分子状コイルから生じるインダクタンス、およびイオン性溶液/導電体界面に形成される電気二重層容量であると考えている。まず現象の基礎を確立することを目的とした。 磁場の強さ・磁場の周波数・導電性高分子膜の厚さ・ドーピング量・溶液のpH・電極電位等が誘導電流の大きさと位相差に与える影響を測定した。電磁場に対するポリアニリン膜の応答は導伝体の巨視的な大きさに関係するらしい。そこで散乱光の測定に挑戦した。可視レーザー光を電気化学セルに浸したポリアニリン膜に照射し,光路をはずした位置に光検出器を置いた。吸光度に依存しない散乱光測定のひとつとして,振幅の小さい交流電位を直流に重畳し,その散乱光の変化分を測定する方法を行ってみた。散乱光の角度依存性を測定したところ、単純なレーリー散乱ではなく、散乱光が干渉していることがわかった。干渉光の角度依存性に関する理論を適用したところ、5μm程度の大きさの導電体のクラスターが生成していることがわかった。クラスターは光学顕微鏡でも観測できた。クラスターの大きさは遅い緩和過程といわれる挙動を示した。
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