二環性の小員環化合物であるビシクロ[1.1.0]ブタンの橋頭位炭素の四面体配置が反転している原因を、σ結合間の相互作用、とりわけジェミナル結合の間の電子の非局在化の相互作用に着目して明らかにし、通常の配置をもつビシクロ[1.1.0]ブタン骨格や反転した配置をもつビシクロ[1.1.0]ブタン骨格を理論設計し、ab initio分子軌道計算によって確認した。 1 ビシクロ[1.1.0]ブタンの反転度合をかえて、結合の強さおよび結合の相互作用を評価した結果、橋頭位間の中央の結合とジェミナル位にある周辺の結合の間の電子の非局在化は、中央結合の高いp性(sp^<9.5>)にため結合的であり、この結合性は反転とともに著しく増加して安定化に寄与するが、中央の結合は弱くなり分子を不安定化させることが明らかとなった。 2 1の結果より、ビシクロ[1.1.0]ブタンの橋頭位の四面体配置の反転の度合を支配している因子は、反転にともなうジェミナル非局在化によるひずみの緩和による促進因子と中央結合の弱化による抵抗因子のバランスであるという仮説を導いた。 3 2の仮説より、架橋位の炭素あるいは橋頭位の水素を電気陰性度の低い原子に置き換えると、より反転するという設計指針が得られ、設計された分子のab initio分子軌道計算により検証された。 4 2の仮説より、中央結合がビシナル位の電子求引性結合への電子非局在化により弱められると、それを補うためジェミナル非局在化の結合性を高めようと反転するという設計指針もえられ、設計された分子のab initioの分子軌道計算により検証された。
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