研究対象として硫化物ガラス固体電解質(Li_2S-SiS_2システム)を検討した。硫化物は酸化物よりアニオンのサイズが大きく、結果としてカチオンの導電経路がより広くなるので高い導電率が期待できる。まずこの材料の本質的な特性を知るために、粒界のない試料を合成した。これにはガラスを合成する際に一般的に使用されているtwin roller法を用いた。導電率測定の結果、この試料は室温で1.0x10^<-5>〜10^<-4>Scm^<-1>の値を示した。また活性化エネルギーは20〜30kcalmol^<-1>であった。次に粉砕した試料の加圧成形体の特性を検討した。この場合電解質の抵抗は粒界抵抗が加算されるため上記の値より導電率が小さくなり、1.0x10^<-6>〜10^<-5>Scm^<-1>であった。即ち全抵抗の約10%はバルクから、残りは粒界に起因していることが分かった。この粒界抵抗を小さくするため系全体に圧力をかけたところ導電率は印可圧力に対し一次依存性を示した。この理由として粒子間の接触面積が増加したことが考えられる。次に粒子間に高導電率相を形成させるため種々のリチウム塩をドープしたところ、Li_3PO_4は界面抵抗を低減し全体の導電率を大きく上昇させることが分かった。またLi_2SiO_3を加えたときは逆に数オーダーの導電率の低下が観測された。この事実は最適なリチウム塩のド-ピングによって界面抵抗をバルクのそれに近づけることができることを示している。次にこの電解質を種々の電極と組み合わせて全固体電池としての特性を検討した。まずリチウム金属電極に対しては酸化還元反応が円滑に進行した。TiS_2などの硫化物電極に対しても同様に作動した。しかしLiCoO_2などの酸化物電極に対しては電極一電解質界面の抵抗が非常に大きくなり、加圧下においても充放電させることができなかった。この事実は物理的な接触だけでなく化学的な界面の修飾が重要であることを示している。
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