窒素酸化物の排出量を効果的に抑制するためには、個々の発生源でのNOx濃度の監視が可能な、安価で簡便なNOxセンサが要求される。半導体ガスセンサは、安価、小型で簡単な装置を作製することができるため、NOxセンサとして、現在最も実用に近い方式の一つである。ところで、窒化ケイ素は高い耐熱性、耐食性、耐熱衝撃性を有し、エンジニアリングセラミックスとして有望な材料の一つである。また、窒化ケイ素(Si_3N_4)中の窒素原子と被検ガスである窒素酸化物中の窒素との電気陰性度の差から、センサ素子表面において窒素酸化物との電荷移動を伴う相互作用が期待される。そこで我々は新たなセンサ材料として窒化ケイ素に着目し、そのNOx検出特性を調べた窒化ケイ素粉末に焼結助剤としてY_2O_3を10wt%添加し、常圧の窒素雰囲気下で1700℃、2時間加熱、焼結体試料を得た。この焼結体ペレットを直方体に加工し、直方体の両端に白金を蒸着して電極とし、これに白金ペーストを用いて白金線を取付けた。センサ素子に一定電圧を印加して、種々のガス濃度における電流値の変化をデジタルマルチメーターで測定した。ここで感度(S)は、空気中におけるセンサの抵抗値(Rair)と所定のガス濃度におけるセンサの抵抗値(Rg)との比、Rg/Rairで定義した。窒化ケイ素を母体としたセンサはNO、NO_2双方のガスに対し応答し、感度は両ガスともに750℃で極大となった。また、NO、NO_2に対する90%応答に要する時間はそれぞれ約5分、約10分であった。このように構造材料として既に実用化されている窒化ケイ素がNOxに対して応答することがわかった。
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