各種金属のポリピラゾリルボラト(BRpz_3)錯体を合成し、その構造化学的特性ならびに化学反応性を検討してきた。ポリピラゾリルボラト配位子の興味あることは、置換ポリピラゾリルボラト配位子(BRpz^*_3)を多様に設計・合成できるので、置換基の選択によって、中心金属周辺の反応場を立体的に規制したり、あるいは中心金属の電子状態を微妙に調整できることである。本研究では、種々の(置換ポリピラゾリルボラト)銅(I)錯体を合成し、NOガスの吸脱着の調査、NO付加錯体種の分子軌道計算、ポリマー担持ポリピラゾリルボラト銅錯体種の調製等を試みた。 (1)各種ポリピラゾリルボラト銅(I)錯体の合成と性質 各種の置換ピラゾール類とそのポリピラゾリルボラトのカリウム塩を合成し、多様な置換ポリピラゾリルボラト銅(I)錯体に誘導した。そして光化学を含め、各種物理化学的性質について検討した。 (2)ポリピラゾリルボラト銅(I)錯体へのNO配位挙動の検討と光分解触媒反応の展開 これら銅(I)錯体溶液をNOガスにさらし、吸収スペクトル変化からNO錯体種の性質の調査を試みた。 (3)ポリピラゾリルボラト(NO)銅(I)錯体種の分子軌道計算 3位にt-ブチル置換基をもつポリピラゾリルボラト銅(I)錯体は、低温で比較的安定なNO錯体種を形成する。単結晶X線構造解析データを用いる拡張ヒュッケル分子軌道計算を行い、その結果を解析中である。 (4)ポリマー担持のポリピラゾリルボラト銅(I)錯体種の調製 ポリスチレン担持のポリピラゾリルボラト塩を調製した。これからポリマー担持のポリピラゾリルボラト銅(I)錯体が得られ、NOなど窒素酸化物除去のための実際的な光触媒システムへの応用が期待される。
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