研究概要 |
1.目的と方針 電界放射ディスプレイ(FEDと略記)は、視野角依存性が無く、動画への追随が早いなど、液晶ディスプレイに勝る特徴を備えた平面ディスプレイである。ブラウン管と同様電子線を蛍光面に照射して発光させるが、電子線加速電圧が数百Vと非常に低く、蛍光体表面の帯電防止が問題になる。われわれは、高負荷型ブラウン管(投射管)用蛍光体を基本に、組成の検討により電気抵抗の軽減を図った。 2.実験結果 われわれは、Ga含有酸化物中の酸素空孔濃度が、対応するA1化合物に比べ著しく増加することを見出した。このことから、酸素空孔に捉えられた電子が電流の担い手となることが推定される。酸素空孔濃度の増大はGa^<3+>の一部が1価に還元されることと関連しており、In,Sn,Tiなどを構成元素とする化合物でも予想される。そこで、(1)投射管用緑色蛍光体Y_3(Al,Ga)_5O_<12>:Tb^<3+>(2)これにさらにInを添加した系列(3)青色蛍光体La(Al,Ga)O_3:Tm^<3+>、の3種類を試料とし、FEDと同じく低速電子線を用いる蛍光表示管の作製を企業に依頼して特性評価を行った。発光強度ないしアノード電流が立ち上がる電圧が蛍光面の電気抵抗の尺度となるので、この閾値電圧にとくに注目した。その結果いずれの試料についてもGaないしIn濃度が高いほど電気抵抗が低下することが見出された。(1)についてはAl/Ga原子比=3/2において輝度が最大になり、製品化されている緑色蛍光体の1.5倍の値を得た。また(2)についてはIn添加により輝度が低下すること、(3)については劣化が少ない反面輝度が低いことが明らかになった。また蛍光面の電気抵抗を低くするには蛍光体の粒径を小さくすることが重要であることを認識した。 3.今後の予定 焼結体の電気抵抗を測定し、Ga濃度と電気抵抗との関係をより直接的に確認する。また低抵抗酸化物の一つであるチタン酸塩を主な対象に高効率蛍光体の可能性を追求する。
|