研究概要 |
(1) 赤色蛍光体SrTiO_3:Pr^<3+>の発光機構 Al添加により発光効率が約100倍向上する現象につき、以下の機構を明らかにした。 (a) 電荷補償効果;Ti^<4+>を置換したAl^<3+>とSr^<2+>位置のPr^<3+>が会合して、互いに電荷補償する。(b )面状欠陥の消滅:HRTEM観察によると、SrTiO_3にはSrO層と思われる面状欠陥が走っている。Al添加によりこの面状欠陥が消滅する。X線回折により、大部分のAlが合成反応の過程でSrとアルミン酸塩を形成してSrO層の生成が抑制され、結晶性が改善されることが明らかになった。 (c) SrTiO_3結晶からPr^<3+>へのエネルギー伝達効率改善:Pr^<3+>の発光は束縛励起子による発光とよく似た励起スペクトルを示すので、Pr^<3+>は電子、正孔の移動により励起エネルギーを受け取るものと思われる。したがって、上記(a)(b)により欠陥が消滅すれば効率が改善される。 なお、SrO層のような面状欠陥はRuddlesden-Popper相と呼ばれる結晶群に共通して存在するので、Al添加と同様な効果は他の化合物でもあり得ると考えられる。 (2) 青色発光蛍光体ZnS:Ag,Al中のトラップ準位の測定 高励起密度下における発光効率低下(輝度飽和)現象の原因を調べるため、光学的手段による深いトラップ準位の測定を行った。深い準位によるオージェ過程により輝度飽和が生じる可能性を検討したが、AgあるいはAl以外の欠陥準位は見出せず、上記の可能性は少ないとの結論に至った。 (3) 蛍光体の導電性測定 電界放射ディスプレイ用蛍光体には、導電性が要求される。ベロブスカイト構造のATiO_3:Pr^<3+>,(A=Ca,Sr,Ba)の比較では、BaTiO_3:Pr^<3+>が他の2つより約3桁低い比抵抗(10^7Ωcm)を示したが、発光効率は低かった。格子欠陥濃度が高いために効率にはマイナスに働いたものと思われる。
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