研究概要 |
本研究では,無機リン化合物におけ摩砕効果を,触媒活性の視点および湿度センサーの視点から同時並行的に検討し,次の知見を得た. 1.各種リン酸塩の合成と摩砕による触媒活性・諸物性の変化 リン酸,水酸化アルミニウム混合物を有機溶媒-水混合液中で加熱することにより,結晶性リン酸アルミニウムを合成し,それらのシス-2-ブテン異性化活性への摩砕の影響を調べた結果,特定の結晶面や表面欠陥部が触媒活性点となるのではなく,合成時に粒子表面に遍在した無定形リン酸アルミニウムが触媒活性点を形成することが示唆された. 酸化イットリウムをリン酸アンモニウムまたはリン酸と加熱反応させることによって5種類のリン酸イットリウムを合成し,それらの1-ブテンの異性化活性に対する摩砕効果を調べた結晶,無定形リン酸イットリウムでは活性増加が認められず,活性発現には結晶粒子界面が重要であることが分かった. 検討した無機リン化合物の中で,ブテン低重合に活性を示したのはリン酸ホウ素のみであった.その触媒活性は,摩砕処理によって増加した.活性増加は比表面積の増加と相関を有していたが,結晶子サイズ・結晶構造の変化も伴っており,詳細な検討が必要である. 2.リン酸チタンおよびCu-P-Y系複合酸化物の湿度センサー特性に対する摩砕効果 リン酸チタンはプロトン伝導体でもあり,周囲の湿度変化によってその電気抵抗が変化する(感湿特性を示す).リン酸チタンは層状構造を有し,摩砕によって比表面積が容易に増加する点に着目して,摩砕後に加圧成形し熱処理した試料の感湿特性を検討した結果,摩砕に起因する湿度センサー特性の有意な変化は認められなかった.リン酸銅と酸化イットリウムを原料として固相反応で作製したCu-P-Y系複合酸化物では摩砕によって湿度センサー特性が少し変化した.これは固相反応の促進と関連すると考えられる.
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