研究概要 |
今年度は,摩砕の効果を触媒活性面に絞って検討した。 1. リン酸塩の合成と摩砕による触媒活性・細孔構造の変化 有機溶媒-水混合液中で合成した結晶性AlPO_4を摩砕するとそのシス-2-ブテン異性化活性は減少し,比表面積,細孔容積,平均細孔半径も減少した。結晶性YPO_4でも摩砕によって1-ブテン異性化活性は減少し,比表面積,細孔容積も減少した。平均細孔半径は増加したが活性増加には寄与しなかった。BPO_4では摩砕によってプロピレン,1-ブテン,シス-2-ブテンの低重合活性が増加し,比表面積も増加した。細孔容積,平均細孔半径は減少したが,活性阻害要因とはならなかった。 2. リン酸塩のブテン低重合活性 7種類のリン酸塩の中でシス-2-ブテン低重合活性を示したのはBPO_4のみであった。特異的ともいえるこのBPO_4の活性発現要因を知るために各種リン酸塩の酸点のタイプを調べた結果,ブレンステッド酸点の存在が必須要素であることが分かった。しかしリン酸チタンはブレンステッド酸点を持つにもかかわらず,活性を示さないことより,さらに細孔容積,平均細孔半径等の因子も関係することが示唆された。 3. リン酸チタンのブテン異性化活性に対する摩砕効果 リン酸チタンは固体酸性を有し,その電気抵抗が湿度によって変化する。リン酸チタン湿度センサー素子を作製する場合,熱処理や摩砕の工程を経るため,酸性質が変化すると予想される。そこで熱処理や摩砕による酸性質(≒ブテン異性化活性)の変化を検討した。αーリン酸チタンの触媒活性は,600℃熱処理により最大値を示すが900℃熱処理後は激減した(不活性なピロリン酸チタンに変化)。このピロリン酸チタンを摩砕すると比表面積が増加した。その触媒活性は,600℃熱処理時に最大となった。このことはピロリン酸チタンの内部に存在した物質が摩砕によって表面に露出し,熱処理によって活性相に変化したことを示唆する。
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