本研究では、高温で分解したり、結晶化してしまう機能性物質をHIP法を用いて低温で焼結した。昨年度に引き続き、今年度は以下の点について研究した。 a.HIP法によるFe_4N-Fe複合材料の作成 Fe_4Nの比抵抗はFeに比べて約10倍大きい。このため、交流磁気特性において渦電流損失が小さくなることが期待される。また、Feは216emu/gという高い飽和磁化を持っている。そこで、Fe_4Nマトリックス中にFeが分布した構造をもつFe_4N-Fe複合材料が作成できれば、Fe_4Nマトリックスによる高い抵抗と、Feによる高い飽和磁化をもつ材料が作成できると考えられる。そこで、今年度はHIP法を用いて低温でFe_4Nの分解を防ぎながら、Fe_4N-Fe複合材料の作成を行った。その結果、Fe_4N組成が高いほど比抵抗は大きくなり、またFe_4N組成70wt%において鉄損を約半分の10Wにまで減らすことができた。 b.SiO_2系非晶質-結晶質複合材料 今年度は結晶質の分散性を向上させるために、オルト珪酸テトラエチルにより作成したSiO_2ゾル中に結晶質を分散させ、それをゲル化して原料粉末を作り、これをHIPした。結晶質混合率が25%の原料をHIP時間0.5-1.5hで処理したところ、1000-1100℃では結晶化は進行せず、非晶質-結晶質複合材料が作成できた。焼結体のK_<1c>は0.45-0.50MN/m^<1.5>であり、同じ非晶質と結晶質のSiO_2からなる瑪瑙の値(0.56MN/m^<1.5>)よりも低かった。ついで、HIPの行程を、1000℃以上では常に100MPa以上の圧力がかかるように変更し、拡散による結晶化が進まないようにした。その結果、1200℃、200MPa、0.5hの条件で瑪瑙に匹敵するK_<1c>(0.58MN/m^<1.5>)を持つ焼結体が得られた。
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