本研究では、高温で分解したり、結晶化してしまう機能性物質をHIP法を用いて低温で焼結した。 a.HIP法によるFe_4N焼結体、およびFe _4N-Feの複合材料の作成 Fe_4N粉末を入れたカプセルを温度450-550℃、圧力50-200MPaで2時間HIPした。Fe_4Nの分解は550℃で確認された。そこで、HIP温度を500℃以下とした。500℃、200MPaの条件でHIPしたときに最大の相対密度97%をもつ焼結体が得られた。また、HIP温度450℃、圧力200MPaにおいて最大の飽和磁化182emu/gをもつ焼結体が得られた。さらに、Fe_4Nマトリックス中にFeが分布した構造をもつFe_4N-Fe複合材料が作成できれば、Fe_4Nによる高い抵抗と、Feによる高い飽和磁化をもつ材料が作成できると期待された。そこで、HIP法により、Fe_4N-Fe複合材料の作成を行った。その結果、Fe_4N組成が高いほど比抵抗は大きくなり、またFe_4N組成70wt%において鉄損を約半分の10Wにまで減らすことができた。 b.SiO_2系非晶質-結晶質複合材料 平均粒径約5μmのα-石英とSiO_2ガラス粉末を原料とし、これらの混合物を温度1200℃、圧力100-200MPaでHIPした。得られた焼結体の偏光顕微鏡観察により、結晶質が非晶質マトリックス中に分散していることが確認された。原料粉末の結晶質混合率25wt%の場合、HIP条件1200℃、200MPa、120minにおいて最大密度2.50g/cm_3が得られた。このときの三点曲げ強度は、同様の構造を持つ天然の瑪瑙の70%に相当する9.2Kg/mm^2であった。さらに、結晶質の分散性を向上させるため、SiO_2ゾル中に結晶質を分散させ、それをゲル化して原料粉末を作り、これをHIPした。その結果、1200℃、200MPa、0.5hの条件で瑪瑙に匹敵するK_<1c>(0.58MN/m^<1.5>)を持つ焼結体が得られた。
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