研究概要 |
本研究は、“糖類をテンプレートとした各種フルオロメチル基を有するアルドール構造の構築"と題されており、これまでほとんど報告例のなかった、メチル基上にフッ素を有するアルドール構造を光学活性体として、しかもモノ、ジ、トリの各種フルオロメチル体を共通の中間体から調製するという概念に基づいて行われたものである。実際には、Red-Alなどによる還元でモノフルオロ化合物に、またDASTによるS_N2^1型のフッ素化でトリフルオロ化合物へと誘導することが可能であるといった特色を考慮に入れて、γ,γ-ジフルオロアリルアルコール構造を共通中間体として設定した。また、この中間体へのフッ素導入は、ケトンに対してのWittig反応を利用することと、水素添加で最終的に各フルオロメチル体へと誘導するため、コンホメーション的に比較的リジッドな化合物が望ましいので、安価かつ簡便に入手でき、各水酸基の位置選択的保護方法が広く研究されているD-グルコースを出発物質とすることに決定した。 平成8年から9年度にかけて、上述したような系を詳細に検討した結果、D-グルコースの2、3、4位のいずれの水酸基を利用しても、非常に効率的にかつ良好な立体選択性を伴って望む各フルオロメチル体を合成する経路を開発することに成功した。また、最終段階である水素添加における立体選択性発現は、分子軌道計算を利用して理論的に解析した結果、多くの場合、アノマー位のメトキシ基の立体ならびに電子的な効果が重要な役割を演じていることを明らかとした。
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