研究概要 |
ベニバナ花井中の紅色色素成分、カルタミンの絶対配置をキラルなモデル化合物を合成し、そのx線結晶構造解析とCDスペクトルの比較により特異なC-グルコシルキノカルコンニ量体の絶対配置をS,S-配置と決定することが出来た。さらに、その他の黄色色素成分、カルタミンプレカーサー、サフラワーイエローB,サフロミンA、サフロミンC、およびイソサフロミンCに共通する構造のC-グルコシルキノカルコンについても、キラルなモデル化合物を合成し、同様の方法を用いることにより絶対配置をS-配置と決定することが出来た。 ベニバナ色素成分の中でも、鎖状の糖鎖を中央に挟んで両脇にカルタミンと同じC-グルコシルキノカルコンを持つサフラワーイエローBは生合成経路の出発物質でもあり、構造的にも最もチャレンジングな化合物であるが、我々はこの度始めて、鎖状の糖鎖を含むモデル化合物の合成に成功した。また、このモデル化合物を用いて我々が提唱してきた生合成経路の確認実験を行ったところ、緩衝液中でこのサフラワーイエローBモデル化合物よりカルタミンモデル化合物が生成することを確認することが出来た。 ベニバナ色素成分同様、高度に酸化され官能基化された構造をとるワサビジエノンAを、アシル基の炭素から酸素への転位反応を開発することにより全合成に始めて成功した。 上記の結果よりカルタミンの全合成には到らなかったが、絶対配置の決定、その他の色素成分についても同様の方法を用いて、絶対配置の決定に成功した。また、類似の骨格を持つ複雑な互変異性体の混合物であるワサビジエノンAのキラル合成にも始めて成功した。
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