研究概要 |
1.ジアルコキシチタナサイクルのアルデヒドへの不斉付加の試み 1,6-ジインとTi(O-i-Pr)_4と2当量のi-PrMgClから発生したチタナシクロペンタジエンに1当量の光学活性ビナフトール塩を添加したのち、アルデヒドを付加したが、付加体に不斉誘起は全くみられなかった。反応系中の夾雑Mg塩の影響が無視できず、光学活性チタン反応種の発生がきれいに進行しないと結論づけられる。そこで、次に基質コントロールの不斉合成手法に切り替えた。 2.分子内アレン・アセチレン不斉環化反応 前年度の研究で、光学活性5,6-ジエン-1-インを同様に環化すると、アリルチタン部位を有するチタナサイクルを与え、これをアルデヒド、ケトン、イミンでトラップすると、位置、立体、ジアステレオ選択的に、かつ出発物質の鏡像体過剰値(ee)を保持して対応する付加体が収率良く得られた。この際の不斉誘起の立体化学を明らかにするため、出発物質の絶対構造と、標品に導き決定した生成物のそれを比較した。この考察により、アルデヒド付加がチタナサイクルを形成するアリルチタン部位につき、厳密にSyn-S_E2'の形式で進行していることを明らかにした。 α,β-不飽和エステルを基質とする不斉環化反応と光学活性テルペン合成への応用 前年度の研究で、共役エステル部位を有するオレフィンまたはアセチレンのダンデム環化反応により、ビシクロ[3.3.0]オクタノンやビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格が収率良く構築できた。この反応において、アリル位の置換基が環化の立体化学制御を効率よく行うことを見出した。そこでこの位置に光学活性な置換基を有する基質を不斉環化し、シクロプロパン部位を有するモノテルペン・サビネンを光学活性体として合成した。 本研究により、所期の低原子価チタンに基づく不斉環化反応の開発目標を、以上述べた通り達成することができた。
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