研究概要 |
シクロプロピルアシルシラン(1)の合成的利用に関する研究の一環として、1の不斉還元による光学活性シリカルビノール(2)の合成および1から誘導されるシクロプロピルシリルエノールエーテル(3)やシクロプロピルシリアルケン(4)の立体選択的骨格変換反応について検討した。 アシルシラン類の不斉還元の研究はほとんど例がないため、1以外のアシルシランも基質に用いキラル還元剤による反応を行った。一般のカルボニル化合物の不斉還元に効果的とされてきたキラルなビナフトール-水素化アルミニウム錯体によるアシルシランの還元反応は、ほとんどラセミ体を与えた。これに対し、(S)-2-アミノ-3-メチル-1,1-ジフェニルブタノールのボラン錯体による還元では最大75%の鏡像体過剰率で対応するシリルカルビノール(2)が得られた。また、シリル基上の置換基がかさ高くなるほど還元反応の立体選択性が良好であることも明らかとなった。今後得られた光学活性な2に対し酸性条件下ホモアリル転位を行い、その1,3-不斉誘導について検討する予定である。 1と硫黄イリドとの反応によりシクロプロピルシリルエノールエーテル(3)を合成し、さらにα-キラルアセタールとのアルドール反応を検討する予定であったが、最初のイリドとの反応が期待通り進行しなかった。しかしながら、アシルシランとシクロプロピルスルホニウムイリドとの反応を検討した結果、シリル基のカチオノトロピー転位が選択的に進行し、良好な収率でシクロプロピリデンシロキシアルカンが得られた。 一方、三員環の2位に電子吸引基を有する1を合成し、これとリンイリドとの反応によりシクロプロピルシリルアルケン(4)を立体選択的に合成した。さらに、4に対し不斉配位子を持つ遷移金属触媒によるシクロペンテン誘導体への骨格転位を計画したが、現在まだその目的を達成できていない。
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