研究概要 |
光学活性アミン類は、生理活性化合物を含む機能性有機化合物の合成研究に必須のものであるが、現在尚、新規で効率的な合成法が求められている。本研究では、1.光学活性アジリンを経由する方法、2.光学活性3-ペンタフルオロ-3-ヒドロキシプロピオニトリル誘導体を経る方法について検討した。いづれの化合物も、各種の誘導体に容易に変換できる汎用性中間体として有用である。研究の概略を下記に示す。 1.アジリン誘導体として、3-フェニル-2H-アジリン-2-メタノールを取りあげ、まず、そのリパーゼによる光学分割の条件をスクリーニングした。10種のリパーゼを検討し、リパーゼPS(天野製薬製)を最適とした後、反応条件として10種の有機溶媒と10種のアシル化剤を検討した。しかし、光学分割の効率性の指標であるE値は17であり、一応の実用性の目安である20には及ばなかった。そこで、酵素反応としては"特異反応場"といえる超低温下の反応を試みたところ、-40℃の条件でE値を99までに上げることに成功した。これは、酵素反応としては、最低温度下での反応制御であるといえ、関連分野へのインパクトは大きい。得られた光学活性アジリンの還元により、対応するアジリジンへのsyn,anti選択的変換にも成功している。アジリジンから、光学活性アミンへの変換は既に多くの研究があり、それらを利用できる。 2.3-ペンタフルオロ-3-ヒドロキシプロピオニトリルのリパーゼによる光学分割もあわせて検討し、含フッ素化合物にはリパーゼLIP(東洋紡製)が最適であり、ほぼ理想的な分割条件を見いだした。さらにニトリル部を還元して、対応する含フッ素アミノアルコールの合成を達成することが出来た。
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