昨年度電子チャンネルのアポ蛋白質部分の埋め込みに成功したので、9年度には金属ポルフィリン錯体をαヘリックスペプチド鎖の中にうめこみ、分子膜を貫通させる必要がある。ヘリックスペプチドあるいは金属ポルフィリン錯体を分子膜中で膜平面に対して平行ではなく垂直に配向させる方法が確立されれば、昨年度成功したような複雑な調製方法を行わずとも電子チャネル系を設計できると考え、以下の実験を推進した。 疎水性ヘリックスペプチド(単純な系としてポリメチル-L-グルタメートを使用)のN-末端に親水基としてポリエチレングリコールを結合させた分子で気水界面における単分子膜を作成した。その結果、この系では表面圧の上昇にともない疎水部のヘリックスペプチドが界面に対し、はじめは平行な状態から立ち上がることが分子断面積から推定された。現在、ヘリックスペプチド部分の界面に対する角度を金基板上に作成したLB膜のRAS-FT-IRにより解析を行っている。 さらに長鎖アルキル基の側鎖をもつ金属ポルフィリン錯体の気水界面での配向性を検討した。この際、通常の卵黄レシチン等のリン脂質を併用すると気水界面での単分子膜のUV-Vis測定(反射型セル部をもつ瞬間マルチ分光測光)では、金属ポルフィリン錯体は界面に対して平行に配向してしまい、電子チャネルとしては望ましくない配向になることがわかった。それに対し長鎖アルキル基(ステアリル)をもつ金属ポルフィリン錯体の場合、表面圧の上昇にともない、水界面での単分子膜のUV-Vis測定でFace to Face型のソレ-バンドのエクサイトンカップリングが測定された。このとき金属ポルフィリン錯体は界面に対して立ち上がっていると考えられる。
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