昨年度に引き続き、不斉を有する芳香族クロモフォアを導入したイソタクチックポリメタクリル酸の側鎖アミド基間水素結合の側鎖クロモフォア構造依存性を検討した。その結果、(S)-1-(1-ナフチル)エチル基を導入したものに比べて、(S)-1-フェニルエチル基を導入したものでは水素結合性溶媒であるジオキサン中でも安定した水素結、が適度な立体障害となり、二次構造(完全水素結合構造)の維持に有効であることが示された。一方、(S)-1-(1-ナフチル)エチル基を導入したものでは、水素結合性溶媒中では完全水素結合構造が部分水素結合構造へ変化することが示された。 また、強い水素結合性溶媒であるトリフルオロ酢酸の添加によってすべての水素結合構造の破壊が起きることが示された。また、分子力場計算から、側鎖にS不斉を導入したこれらイソタクチックポリメタクリルアミドは1つ置きのモノマー残基間で完全水素結合した安定な右巻き52ヘリックス構造をとること、また、その構造から得られる定性的理論CDは観測CDとほぼ一致することが示された。また、完全水素結合構造をとると、側鎖ナフチル基間励起エネルギー伝達効率が向上することが消光実験により示され、分子素子としての有用性がより明らかになった。これらポリマーを溶媒キャストして得られるフィルムは、XRDから、剛直らせん構造の自己組織化によりラメラ構造が形成されること等が示された。 一方、ポリ-L-グルタミン系では、フィルムのCDのアニール温度依存性から3種類の側鎖構造(配向)が存在し、その割合はアニール温度によって変化することが示され、側鎖配向が制御できる可能性が示された。分子力場計算からも数種の安定、準安定側鎖構造が示唆され、そのうちの1つは主鎖-側鎖で水素結合する構造であり、IRから示唆された水素結合側鎖アミド基の存在を支持する結果を得た。その時、主鎖構造がα-ヘリックスから乖離することも示唆された。また、CDによって観測されたアニールによる側鎖構造変化が、XRDにおいて六方晶の面間隔の変化として観測されることが確かめられた。
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