研究概要 |
本研究では、デンドリマーのフラクタル構造が作り出す均一な分子間隙を利用した分子認識による物質分離を目的としている。この目的に従い、本年度は以下のように研究を遂行した。 1. 初年度の成果を基に、最外殻部のユニットとして、トリメチルシリル基またはジメチルシロキサン鎖が導入された、フェニレンエチニレンを繰り返し単位とする第3世代までのフェニルアセチレンデンドリテイックモノマーを合成した。また、構造比較のため、フェニレンエチニレンやジメチルシリレンをスペーサーとするデンドリティックモノマーも合わせて合成した。[Rh(C_7H_8)Cl]_2を触媒として用い、合成したデンドリティックマクロマーを重合することで、触媒量を減らす等重合条件によっては重合度数千に達するポリデンドロンも合成できた。 2. 得られたポリデンドロンの構造を、IR、NMR、X線回折、GPC-LALLS測定により明らかにした。IR,^1H NMR,^<13>C NMRにおける末端アセチレンピーク(3316cm^<-1>,δ3.11,δ78.29 and 82.02)の消失、および^<13>C NMRにおける内部アセチレンピーク(δ89.12and89.80)の維持により、モノマーにおける末端アセチレンのみでの重合を確認した。GPC-LALLSにより求められた分子量は、ポリスチレン換算の分子量に比べ大きく、第2世代ではより顕著となり、コンパクトなデンドリマー構造の寄与を示唆した。ポリマーの^1H NMRではδ5.8〜6.0にシス構造に起因するシグナルが観測され、立体規則的なシスリッチなポリ(フェニルアセチレン)誘導体であることが示唆された。また、可視吸収極大λmaxは対応するゼロ世代ポリマーに比べ長波長シフトし、メタ位の置換基効果による共役長の増大を示唆した。ただし、スペーサーによってその効果は減少した。X線回折スペクトルでは、2θ=3〜6°の範囲に擬ヘキサゴナル格子の(100)反射と推察されるピークを示した。面間隔から概算したポリマーの直径は、世代の成長と共に増大した。 3. これらのポリデンドロンでは、クロロホルムを溶媒としてキャストすることで、重合度に対応して丈夫な膜が得られ、外殻部のシリル基と内部のフェニレンエチニレンのユニット数を調節することで、酸素・窒素透過係数(PO_2,PN_2)および分離係数(PO_2/PN_2)を調節することができ、ポリフェニルアセチレンやポリジメチルシロキサンや0世代のポリマーに比べて優れた性能を示した。特に、フェニレンエチニレンのユニット数を増やすことで、酸素透過係数をそれほど下げずに分離係数を向上させることに成功し、最も優れた膜では、Po_2=45barrer,Po_2/PN_2=4.6であった。
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