かさ高いキラルなピナニル基を持つシリルアセチレンポリマーよりの膜が優れた光学分割能を示すこと、そしてこの膜は孔のない緻密な膜で複数のかさ高いキラルなピナニル基の間隙が『高密度な不斉空間』を形成し、ここをラセミ体が透過する際にR体とS体で拡散性の差が生じ光学分割が行われると考えられたことを見い出した。しかしながらこの不斉空間は非常に狭く、またピナニル基もかさ高く運動性が低いためにこの膜では透過速度が非常に低いものとなった。この点は同じピナニル基をペンダントに持ち、より主鎖の柔らかい『ポリシロキサン』を含む膜により透過速度の向上に成坊し解決した。ゾル-ゲル法によるラダーあるいは網目構造を目的とした場合は、架橋やシラノール基の同時に生成が起こり、膜全体の不均一化を引き起こし、透過性能を低下させた。またアルキルシロキシ基の加水分解で明確な分子間隙の生成を期待した場合も、水酸基の生成による水素結合形成が起こるため分子間隙は保持されなかった。したがって、膜状態での『ゾル-ゲル法』あるいはアルキルシロキシ基の加水分解による構造修飾をできるだけ他の構造に影響を与えずに行うことが必要である。 これらの結果から、本研究で得られた結論を以下にまとめる。 1) 『高密度な不斉空間』は高い選択性をもつ光学分割膜の実現に重要である。 2) 『ポリシロキサン』構造の導入は透過性の向上に効果を示す。 3) 膜状態での『ゾル-ゲル法』あるいはアルキルシロキシ基の加水分解による構造修飾は膜強度の低下や膜中の欠陥の生成を併発し、制御が難しい。
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