研究概要 |
ビニルエーテルのカチオン重合では,適当な開始剤(対イオン)を選ぶことにより成長炭素カチオン(C^+)が安定化し,リビング重合が可能となる。本研究では,重合速度や生成ポリマーの分子量・分子量分布に加え,生成ポリマーの立体構造を測定し,リビングカチオン重合を可能とする開始剤を検討する。 まずイソブチルビニルエーテル(IBVE)をモノマーとして,無極性溶媒中でリビング重合が可能なIBVE-HCl/ZnCl_2(Zn系開始剤),IBVE-AcOH/EtAlCl_2 (Al系開始剤)を用い,IBVEの重合における溶媒の極性の影響を検討したところ,溶媒の極性に無関係にZn系開始剤からはリビング重合が起こり,Al系開始剤からは分子量分布の広いポリマーが得られた。 ポリマーの立体構造は,無極性溶媒(トルエン)中で生成したポリマーに関しては,開始剤の種類によりmeso含率に差があり(Zn系,m=70.2%, Al系; m=78.9%),対イオンの影響が見られた。一方,極性の大きなCH_2Cl_2/EtNO_2混合溶媒中で生成したポリマーの立体構造は,開始剤によらず同じであり(m【approximately equal】56%),成長反応は共に対イオンに影響されない遊離イオンのモノマーへの付加であることを示唆している。この事から,成長鎖の解離状態とは無関係に,リビングカチオン重合には,可逆的にイオン解離が可能なdormant種を生成する求核性の大きな開始剤(対イオン)の使用が必要なことが明らかとなった。
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