本研究では、α-置換メチルアクリル酸エステル(CH_2=C (CH_2X) COOR)でX=Br、SR'等の付加開裂連鎖移動では、2分子停止の寄与を最小限としα-末端にはXがω-末端にはCH_2C (=CH_2) COORが定量的に導入されることを利用してラジカル重合ポリマーの分岐構造を制御し、架橋のないデンドリマ-状の高度分岐ポリマーの合成を検討している。本年度は、^1H-NMRのよる末端基定量の容易さを考慮しX=SCH_2C_6H_5の2官能性付加開裂連鎖移動剤であるCH_2=C (CH_2SCH_2C_6H_5) COOCH_2CH_2OOCC-(CH_2SCH_2C_6H_5)=CH_2を合成して使用した。少量の連鎖移動剤を添加してメタクリル酸メチルの重合を行い、生成ポリマーの^1H-NMRスペクトルにおける付加開裂で生成したC=CH_2とOCH_2のプロトンによる共鳴の強度比とGPCで求めたM_nとを比較し2本のポリマー鎖が-CH_2C (=CH_2) COO-を介して-CH_2CH_2-に結合していることを確かめた。なお、この重合では高重合率に達しても架橋は起こらず所定の連鎖移動が効率よく起こっていることがわかる。さらに、重合性の二重結合と付加開裂連鎖移動を行う炭素-炭素二重結合とを含む化合物であるCH_2=C (CH_3) COOCH_2CH_2OOCC (CH_2SCH_2C_6H_5)=CH_2も合成した。この連鎖移動剤を少量添加してメタクリル酸メチルの重合を行い、分岐ポリマーラジカルが連鎖移動性二重結合に付加して結合するから、架橋を起こすことなく高度分岐ポリマーを合成することができた。この場合も、構造解析により分岐点含量および平均分岐長を決定し、構造設計の可能な分岐ポリマーの合成法としての有用性を確認した。なお、X=Brの多官能性連鎖移動剤の合成も試みたが、ブロモメチル基自身が高反応性であるため基本構造が損なわれ成功したなかった。
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