研究課題/領域番号 |
08651062
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研究機関 | 高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
鈴木 健訓 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 教授 (40162961)
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研究分担者 |
沼尻 正晴 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (20189385)
沖 雄一 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (40204094)
三浦 太一 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (80209717)
近藤 健次郎 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (20004434)
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キーワード | 陽電子消滅 / 熱硬化性樹脂 / 自由体積 / エポキシ樹脂 / シアネート樹脂 / 重合反応 / 重合度 / 陽電子の寿命 |
研究概要 |
シアネート樹脂(Bisphenol A dicyanate、BADCY)の硬化過程について、陽電子消滅法(Positron Annihilation)の手法を用いて解析した。この樹脂は室温で粉末、77℃で液体になり、さらに、高温で固体になるという3種類の状態変化を示す。陽電子消滅の手法は、異なる状態変化に対し敏感に反応して、硬化過程を詳細に解析する事が可能である。 室温でモノマーの分子は-OCN基を持っており、これが電子親和力が大きく分極しているため、陽電子の最終の消滅段階で、ターミナルスパー内の自由電子と結合出来なくなり、ポジトロニウム(PS)生成が妨げられる。これは、PS生成量が減少することに対応しており、室温ではo-Psの生成量を示す陽電子消滅強度13が非常に小さい。 温度を120℃や150℃に上昇すると、粉末は溶解し、液体の状態になる。この状態では、Psはバブルを形成し-OCN基の影響が減少するため、Ps生成は増加する。さらに、-OCNは開環重合してトリアジン環を形成し、-OCN基の持つ電子親和力は減少するため、重合と共にPs生成が促進され、13の急激な増加、寿命(τ3)の減少として観測される。 今年度は、(1)硬化の過程、をさらに発展させて(2)自由体積と高分子の緩和、(3)低速陽電子ビームによる高分子表層の研究をスタートさせた。硬化の過程で陽電子消滅法が観測しているのは自由体積の変化である。これは、高分子の電気的、機械的、他多くの特性を決めているものであり、自由体積が陽電子消滅法で観測され、それがどのように、諸性質に反映し、また、関連しているか研究することは、高分子材料の解析と陽電子消滅法の理解の観点から重要である。
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