研究概要 |
合成ポリペプチドは液晶相形成能を有し,高分子液晶と呼ばれるが,ある条件下では流動性を失い,ゲル化する.本研究では動的光散乱法を用いて,ポリ(γ-ベンジルL-グルタメート)(PBLG)-トルエン系における濃度揺らぎに基づく拡散定数の精密な測定から,前年度においては,準平衡的な高分子液晶ゲルの形成・会合過程を明らかにした.引き続き本年度(最終年度)では,クエンチ操作による非平衡的なゾル-ゲル転移の挙動とその会合ゲル構造を明らかにしたので,以下に述べる. PBLGの希薄及び準希薄溶液をクエンチ操作により,ゾル-ゲル転移を起こさせ,散乱光強度の時間分解測定を各散乱角で行なった.その結果, 1.散乱光強度クエンチ後の時間経過に対して指数関数的に増加し,Gahnの線形理論に基づく解析から,スピノ-ダル分解過程に従う相分離過程が進行したことが始めて明かとなった.この結果,スピノ-ダル温度,バイノ-ダル温度を各溶液濃度に対して決定できた. 2.また,散乱光強度の時間分解パターン現われたピークから,濃度揺らぎに基づく最大特性波長を求めることができた. 3.さらに,散乱光強度の時間分解パターンの散乱ベクトル依存性からフラクラル次元および相関長を求めた結果,溶液濃度の増加とともに,密なゲル構造を反映し,フラクラル次元の増加,相関長の減少が見られた.相関長は先の最大特性波長より小さい値となった. 以上の2年間の研究成果から高分子液晶ゲル形成過程とそのダイナミクスのかなりの部分が明らかとなった.
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