熱硬化性樹脂であるビスフェノールA型ジシアナ-トをPVT(圧力-体積-温度)測定装置を用いて高静水圧下で熱硬化させたところ、予想に反して高圧下では硬化収縮を抑えられることがわかった。低収縮の原因を追求するために、X線回折、赤外吸収スペクトルなどによる構造解析を行った。また、分子力学法による分子構造の計算を行い、上記の方法で考えられる構造と比較することによって高圧硬化における分子構造の変化を調べた。高圧硬化では分子が常圧下での硬化と比べてより規則的に配列していることがわかった。体積収縮が抑えられることについては、かさ高いこの分子が規則的に配列した構造に起因すると考えられる。また、低収縮にも拘わらず、力学物性の優れたものが得られた。 ポリスチレンなどの非晶性高分子のガラス状態及びガラス化をPVT装置により調べた。高圧下で昇温・降温を行ったガラスについて、ガラス転移温度以上でも溶融しにくい試料を作製することができることがわかった。この試料について熱測定および動的粘弾性測定を行い、その挙動を調べた。 ポリマーブレンドの相図の圧力依存性について、圧力下での曇点測定により評価した。また、この挙動について状態方程式理論を用いて計算し、実験と理論がよく一致することを確かめるとともに、混合系の体積の挙動が圧力下での相挙動に大きく影響を及ぼしていることがわかった。高圧下での相分離現象については、現在、測定中であり、相分離の速度や相図との関わりについて追跡している。さらには、高圧下で形成される多相構造を有する試料の熱測定・力学測定を行い、構造制御による材料物性の高性能化を図る予定である。
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