前年度において、光反応性高分子薄膜に直線偏光を照射し、この膜表面に色素溶液を塗布して配向色素膜を形成させる機構解明の過程で、この色素の高濃度溶液がリオトロピック液晶相であることが観察された。今年度は、この知見を基にしてリオトロピック液晶の光配向制御について検討し、多量の水を含む液晶相にもかかわらず、安定な配向が実現できることをはじめて明らかにした。 1)色素の約10%水溶液はM相の液晶組織を示すが、これにノニオン系界面活性剤を少量添加することによって、ネマチック相に変わることを見いだした。ネマチック・等方相転移温度は色素濃度に依存するが、約50°であった。このリオトロピック液晶相のX線回折実験から、2種類の周期構造が認められた。一つは色素分子間距離に相当し、今一つは色素分子が集合して形成するカラム間距離に相当すると推察した。 2)このリオトロピック液晶層が光配向制御できる新しい現象を見いだした。側鎖にアゾベンゼン基を有する高分子薄膜を塗布したガラス基板で空セルを作製し、これに直線偏光を照射した後に、色素水溶液を充填したところ、色素分子が1軸配向していることが認められた。この配向状態は、水が90%占めているにもかかわらず、室温できわめて安定であった。また、偏光軸を変えて2回照射する方法によって、リオトロピック相による画像を形成させることが分かった。 3)他のリオトロピック液晶として、抗アレルギー医薬品として有名なDSCGの水溶液について検討した。その結果、上記と同様な方法によって、このリオトロピック液晶も偏光照射によって配向制御できた。
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