研究概要 |
ゲル形成能を持つ電解質多糖として、既に分子構造の解析が行われているジェランガムを選び、その精製法を検討した。ジェランガムはD-グルコース、D-グルクロン酸、D-グルコース、L-ラムノースを繰り返し単位とする直鎖状高分子である。 平成8年度には、ジェランガムの0.1%水溶液を105Cで10時間加熱溶解後ろ過し、60Cでナトリウムイオンに置換したイオン交換樹脂カラムを通し更に凍結乾燥を行い試料を回収することにより、混入した不要なイオンが除かれ、ナトリウム型の精製試料が得られることを見い出した。精製試料を用いてNaCl水溶液中で温度を変えて浸透圧測定を行った結果、ジェランガム分子の数平均分子量は約5×10^4であり、分子に形態は温度低下にともない1分子から2分子会合体形成へと変化すること、その際の会合速度は溶液の塩濃度が高いほど速く、会合の自由エネルギーは20KJmol^<-1>程度であることなどの知見を得た。さらに試料のNaCl溶液の固有粘度の温度依存性の測定からも温度低下に伴う形態変化を示唆する結果が得られた。 平成9年度には粉砕時間を210分から30分までかえた6種のジェランガム粉砕試料について、それぞれの水溶液を加熱溶解(105Cで10時間)ろ過により粉砕時に混入した金属粉を除きさらに、イオン交換樹脂カラムを通して試料中のイオンをナトリウムに置換して、ナトリウム型の精製試料を作製した。これらの試料を50mM,NaCl水溶液に溶解し、40°Cで浸透圧測定を行い、数平均分子量を求めた。得られた分子量は6万から1万にわたり、粉砕により分子の主鎖が切れ、異なった分子量の試料が作製されたことが確認された。また、これら試料溶液の浸透圧第二ビリアル係数はほぼ一致した値であり、イオン間の相互作用を示すものと考えられた。
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