1.問題の設定と数値シミュレーションによる検討 航空機が洋上を超音速飛行する事により発生する衝撃波が、水面と干渉し水中の流体環境にどのような影響を及ぼすか明らかにするのが本研究の目的である。問題の本質を押えつつ設定を簡単にするため、ここでは水面上を伝播する2次元垂直衝撃波を対象とする事にした。実験装置の製作に先立ち、2次元オイラー方程式による数値シミュレーションが行われた。本問題では圧縮性流体である気相と準非圧縮性流体である液相の界面を捉えつつ両者の流れ場を同時に解かなければならない。ここでは移流項を精度良く解く事ができるCIP法を適用した解析コードを開発した。その結果、気相の衝撃波通過に伴い、液相(水中)では衝撃波通過時の有限幅圧力上昇のみならずその前後に先行波と残留波の圧力波が生じる事が予想された。その周期は水深に比例し、振幅も水深に従って大きくなっていた。以上の結果を踏まえ実験においては1)液相における圧力波の存在確認とその特性、2)衝撃波通過による水面の変形(波浪の形成)プロセスの解明の2点を主目的として実験準備を開始した。 2.実験装置の設計 実験では、衝撃波を衝撃波管を用いて発生させ水槽を持つ測定部と干渉させる。水槽底面に圧力センサーを取り付け気相衝撃波の通過と液相での圧力波の発生を確認する。当初、破膜式衝撃波管を想定していたが再現性と膜片飛散に問題があるため、ピストン駆動の高速バルブ方式による衝撃波管を製作する事とした。設計に当たっては同種の衝撃波管を所有する宇宙科学研究所・安倍研究室から指導を受け、本年度は高圧部の製作を行った。 3.今後の研究計画 来年度は実験装置を完成させ実験を行うとともに、波浪の形成を捉えるため粘性・表面張力を考慮したシミュレーションコードを開発し、実験と比較しつつ上記の2点を明らかにしていく予定である。
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