研究概要 |
高温高速風洞設備(全温1500K最大、マッハ数1.8)を利用し、水素ガスをダクト壁面円孔からの垂直音速噴射により、超音速連続燃焼実験を行った.自発着火現象を支配する主要なパラメータである主流全温、燃料噴射圧力に加え、燃料温度をパラメータとするために熱線蓄熱式(10kW級)水素加熱装置を製作した.加熱装置の安全な作動を確認し,毎秒0.8gの水素ガスを700Kまで上昇できる加熱性能を得た.更に、実験において高温主流にさらされる試験部ダクト壁との熱交換を組み合わせることにより、水素全温900Kが得られることを確認した.また、高温主流により失透する観測石英窓ガラスを、必要時のみ設置できるように機構の改造を行い、光学計測に対する最低限の透明度を確保した. 前記の水素加熱装置を用いた超音速燃焼実験の結果、試験部内での確実な安定した超音速燃焼火炎を確認した.しかし、着火初期、即ち、発光微弱な反応過程を捉えることができず、ビデオモニターで確認できる明確な火炎(大規模火炎)の発生点試験部に存在するで整理を行った.なお、この位置は、燃料噴射に伴い発生するバウショックや試験部内に存在する各種の衝撃波の反射点に相当する.その結果、主流空気全温の低い領域で水素温度の影響が現れ、燃料温度の上昇が大規模火炎着火距離の短縮にある程度の効果があることがわかった.しかし、全般的には、反応は主流全温にほぼ支配され、燃料温度の影響は少ないという結果が得られた. 今後の展開について考慮すると、燃料温度のこれ以上の高温化は現実的に限界にきており、新たな焼く促進機構の解明を考慮すべきである.その一つとして、着火メカニズムが根本的に異なるという問題があるが、プラズマト-チによる数万度という熱源投入、さらに、酸素または水素ラジカルを添加することによる超音速燃料反応促進の効果を図る方向で検討している.
|