本研究の特色は、荒天中では平らな水面は存在しないことに着目し、初めから波面の3次元的変形を考慮した理論の構築を行なったことである。このようにすれば、従来の空気巻き込みの研究で問題になっていた物体端部の問題無しに空気巻き込みの影響を論じることが出来る。また、本研究の目的はこの理論を骨格として空気巻き込み、弾性、3次元影響による最大圧力の低減について調べるとともに、フルード則で実験値を実船の値に換算した際に生じる差異(尺度影響)を理論的な面から説明することである。 3年間にわたる研究により以下の成果を得た。底面が弾性変形する場合、弾性変形を考慮していれば、線形理論で良好な推定値を得ることが出来、空気流の影響は無視し得ることが分かった。水面の3次元的変形により、物体底面全体を平均した平均圧力はかなり低減されるが、その際巻き込まれる空気による低減効果は大きくないことも分かった。また、空気巻き込みを伴う軸対称物体の水面衝撃では、線形理論により精度良く巻き込み空気圧を推定出来、実験とも良好な一致を示す。したがって、水面が完全に平面でなければ、線形理論で十分精度よく衝撃圧を推定可能である。そこで、実船スケールと模型スケールの間の尺度影響を調べた結果、かなり大きな尺度影響があることが分かった。しかし、その尺度影響の程度は物体形状、突入速度などの状況により大きく変わる可能性があるため、簡潔な尺度影響の推定法を提案するには至らなかった。
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