デイ-ゼル主機の排熱回収の蒸気発生器である排ガスエコノマイザの伝熱面は、排ガス中に含まれるス-トで汚され、種々の障害に悩まされる。とくに問題なのは堆積したス-トが燃焼し、ひどい場合には伝熱面がメルトダウンに至る「ス-トファイア」と呼ばれる深刻な事故が生じることである。本研究によりス-トファイアの機構を解明し、防止のための方策を提示できた。 1 事故実態の調査分析・・・・ス-トファイア事故データを集めて分析し、主な関係因子は運転状態、循環条件、伝熱面の形状であることを明らかにした。 2 ス-トファイアのシミュレーションモデルの構築・・・・ス-トファイアの計算機シミュレーションモデルを構築した。モデルは実際の現象をうまく再現していることが確認され、伝熱面に堆積したス-トが燃焼する諸条件、伝熱面の上昇温度などが推定可能になった。 3 鉄鋼材料の酸化速度に関する分析・・・・上のシミュレーションモデルにより、堆積したス-トの燃焼熱だけでは伝熱面が溶融するまでには到らないことがわかった。そこで伝熱面フィンなど鉄鋼材料の酸化速度に関する諸条件を調べた。その結果実用されているフィンの場合、一定の条件ではメルトダウンを引き起こす熱源となり得ることが明らかになった。 4 メルトダウンの機構・・・・メルトダウンに到る過程は以下のようであることが解明された。 ス-ト燃焼発生→→不均等加熱のためドライアウト発生→→熱除去効果喪失のためフィン温度急上昇→→フィン材の酸化速度急上昇による酸化熱のためフィン温度さらに上昇→→メルトダウン 5 水循環設計条件の分析・・・・排エコは、強制循環の並列水平管で構成され、しかも低圧なので水側がドライアウトしやすく、水循環設計条件が重要である。国内排エコの設計条件を調査した。その結果ドライアウトの可能性の高い設計がなされている排エコも存在することが明らかになった。 6 本研究の結果に基づいて一連のス-トファイア防止策を提言し、海運、造船、排エコメーカなどでそれが採用され、現在ス-トファイア事故は急減することとなり、大きな成果を得た。
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