超大型浮体式海洋構造物は、将来実現するであろう海上空港として有力なコンセプトの一つであるが、相対的に剛性が弱いために、波浪中ではゴムマットのような弾性挙動をする。本研究では、そのような弾性浮体が短波長の波浪中に置かれている場合、その浮体に働く流体力ならびに弾性挙動の実用計算法を開発・確立することが目標であった。この目標は殆ど達成できたと言えるが、より具体的には以下のとおりである。 1)計算法として三次元境界要素法を基本とするが、未知数である浮体下面での圧力分布の表示に高次要素を使うというのが当初からのアイデアであった。そこで、各方面で実績のあった双方向3次スプライン関数を高次要素として用い、境界条件を満足させる手法としてガラーキン法を採用した。計算時間を短縮するために、計算対象が平板であると限定し、マトリックスの影響関数を計算する際に「計算の相似性」を積極的に導入した。更に特異性を除去して精度を高めるために、特異積分に対する解析解の組み入れも行った。その結果、従来の計算法では絶対に不可能であった非常に短い波長に対しても、極めて精度の高い計算が少ない計算時間でできるようになった。 2)弾性挙動の計算法は、モード展開法と直接法の二つに大きく分けられる。昨年度以来モード展開法に基づいた研究を行い、十分な成果を得てきたが、各モードに対する情報は必要ではなく、最終的にトータルの弾性挙動が分かれば良いという観点からすると、直接法の方が分かり易い。そこで今年度は、Bスプライン関数を用いた直接法の開発を行った。この新しい方法では、圧力分布と弾性変位が同じBスプライン関数で表され、しかもガラーキン法、「計算の相似性」の利用などはモード展開法の時と同じであるから、計算プログラムは簡潔であり、しかも高い精度・短い計算時間を実現させることができた。
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