本年度の研究実施計画に従い、1)AE解析プログラム、AEとき裂のフラクタル解析プログラムを統合した3次元楕円盤き裂系モデルの作成、2)岩石試験片の単軸圧縮試験に伴うAEとき裂画像の計測、3)き裂分布画像の解析プログラムの作成を試みた。 1、岩石の水圧破砕過程で発生するAEデータを対象に、AE解析プログラム(震源標定、規模別頻度分布、発生機構解析等)を適用した結果、記録されたAE事象すべてに対して発生機構を推定するのは困難である事がわかった。従って、微小き裂の方位情報を必要とする3次元楕円盤き裂系モデルを構築するためには、発生機構の解析ができたAE事象のき裂方位分布を用いて、残りの事象の方位を外挿する方法が有効と考えられ、現在この方法に従ったき裂系モデル構築プログラムを作成中である。一方フラクタル解析により、AE震源分布、規模別頻度分布ならびにき裂形状のフラクタル性が確認され、き裂系モデルへの適用が可能になった。 2、本年度は、単軸圧縮試験に加え、SCB(半円盤曲げ試験片)を用いた破壊靱性試験も実施し、き裂進展画像とAEを同時に計測した。このき裂画像の取得には、本補助金で購入した高解像度デジタルマイクロスコープ(マイクロウォッチャー、VS-60)を使用した。このマイクロウォッチャーの利用により、当初予定していた試験片の染色が必ずしも必要でないことが解かった。 3、上述の実験で得られたき裂画像データの解析プログラムを作成し、画像解析結果とAE震源標定の結果を検討した。その結果、き裂先端近傍のプロセスゾーンでAEを伴う微小き裂が先行し、その微小き裂が主き裂へと成長する過程を可視化でき、それに伴うAEを対応付ける事ができた。 次年度は、3次元楕円盤き裂系モデルの作成プログラムに改善を加え、き裂およびAEのフラクタル次元をベースにしたき裂系モデルを作成し、その妥当性を検証する計画である。
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