本研究の最終年度である今年度は、SCB試験片による破壊靭性試験ならびに角柱試験片の単軸圧縮試験を継続すると共に、AE震源分布に基づくき裂分布モデル作成のためのプログラムを開発し、試験片の画像計測により得られた実際のき裂分布との対比を試みた。 1、半円盤型砂岩試験片(SCB)を用いた破壊靭性試験において、ノッチ先端部分のき裂進展画像をAEの発生に同期させて計測した。この実験では試験片の厚さを薄くすることにより(10mm)、AE並びにき裂画像データの解析を2次元で行った。その結果、き裂分布ならびにAE震源分布はフラクタルであることが確認できた。また、AE震源分布と相対AEエネルギーを基に直線き裂モデルを作成し、実際のき裂分布のリニアメントと比較すると、フラクタル次元は近い値を示した。 2、花崗岩の角柱試験片を用い単軸圧縮試験を行い、試験の前後で試験片表面のき裂分布画像を計測した。また、試験後試験片を切断し、内部の8面のき裂分布画像を計測した。これらのき裂画像から試験片表面のき裂分布並びに内部のき裂分布を再構成した。その結果、き裂の方位分布には卓越方向が見られた。このことから、AEデータよりき裂をモデル化するに当たっては、試験片の異方性を考慮してモデルに方位分布を与える必要のあることがわかった。 3、これまでの実験結果等に基づき、AE計測データから3次元き裂分布モデルを表示する手法を開発した。すなわち、AE震源分布と規模別頻度分布データを基に、き裂面を3次元空間内に大小の円盤で配置し、試験片表面(2次元平面)内に現れる円盤の切断線分布のフラクタル次元と実際のき裂分布のフラクタル次元が近い値になるまで順次AE震源を増加させる事により、3次元空間内のき裂分布をモデル化した。この手法を上述の角柱試験片を用いた実験結果に適用し、その妥当性を確認した。
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