岩盤内のき裂系のモデル化は、空洞周辺岩盤の安定性評価や浸透流解析等、種々のシミュレーションのために重要である。本研究では、応力下の岩石供試体から発生するAE(acoustic emission)計測データ(震源分布、規模別頻度分布、発生機構解析等)とそれらのフラクタル性を考慮して、供試体内のき裂群を円盤分布でモデル化するために3種類の実験を行った。 1.岩石の水圧破砕試験により、破砕に至る過程で発生するAEの震源分布並びに規模別頻度分布は、共にフラクタルであることがわかった。しかしながらAEの発生機構解析では、比較的規模の大きな事象からはき裂のタイプ、モーメントの主値、主方向が決定できたものの、大半の事象に対しては解析が困難であることが判明した。 2.半円盤状の岩石供試体による破壊靱性試験では、2次元き裂分布並びにAE震源分布が共にフラクタルであった。その際に得られたAE計測データから直線き裂分布モデルを作成し、き裂観察画像のリニアメントと対比した結果、AE事象数を規模別頻度分布に従って調整すれば、両者のフラクタル次元をほぼ一致させることができた。 3.角柱供試体の単軸圧縮試験において、AE計測データから円盤き裂分布モデルを作成した。このモデルにおいて供試体の側面に現れる円盤の切断線分布と、供試体から直接観察されるき裂分布画像の両者のフラクタル次元が一致するように、AE計測データのフラクタル性を考慮してモデルを反復修正した。この手法により、3次元の円盤き裂分布モデルを構築できた。 AE計測データと自由面に現れるき裂分布画像データのフラクタル性を考慮した、この3次元円盤き裂分布モデルの作成手法は、地下空洞の開削等においてAE計測と壁面のき裂分布観察を行えば、岩盤奥部のき裂分布を直ちにモデル化できることから、現場への適用が充分可能と考える。
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