粒状固体物のスラリー輸送における経済的な輸送速度(臨界速度)は、管路底上で固体粒子が静止・堆積し始める堆積限界速度附近に存在すると言われている。しかし、スラリーの平均速度の減少に応じて、その流動様式は、懸濁流れ、摺動流、滑動層を伴う流れ、静止堆積層を伴う流れへと遷移し、堆積限界速度を目視観察によって明確に定めることは極めて困難なことが多い。また、これまで流動様式と輸送エネルギーとの関係が十分に説明されていない。 本研究では、粒状固体物の合成樹脂管内スラリー輸送において、堆積限界速度域の固体粒子の流動の特性ならびにメカニズムを明らかにするため、(a)スラリー流動の濃度分布、速度分布および水力勾配などの設計項目に関し、基礎的な実験データを正確に集積する技術を開発すること、(b)理論的な考察を進め、実験結果を十分な精度で説明し得る計算方法を確率すること、の2点に研究の重点が置かれた。 その結果、次の結論を得た。 (1)合成樹脂管の流動摩擦係数は流動様式ならびに輸送条件によって変化する。 (2)スラリーの流速を減少させて、その値を堆積限界速度に限りなく近づけるとき、滑動層の高さが増加する。また、スラリーの流速に対する管底上の粒子の移動速度の相対速度は、急激に減少する特性を示し、この関係を式で与えることができる。しかし、固体粒子が管底に静止し始める速度値を、堆積限界速度の値と定義することは、実質上、不可能であり、堆積限界速度の解析には、しきい値の考え方の導入が必要である。 (3)ストロボ発光システムとデジタルビデオカメラを組み合わせ、高解像静止画映像解析のソフトウェア手法を開発した。これによって、吐出し濃度が約12%までのスラリーの流動状態を解析し、輸送条件の変化に変動する速度分布ならびに濃度分布を測定する画像解析システムを構築することが可能となった。 (4)粒状固体物の粒度が異なるときのスラリーの圧力損失の計算方法として、新たに修正Wasp法を提案し、この方法を用いると、実用的に十分な精度スラリー輸送に必要なエネルギーを算出し得ることを示した。
|