本研究では、地下水理特性逆解析手法であるハイドロパルストモグラフィー技術を多相流動条件に拡張するために、逆解析アルゴリズムの研究を行った。また、逆解析結果の信頼性を客観的に評価する手法の研究を行った。さらに、室内実験データおよび原位置試験データへの適用を試みた。 逆解析アルゴリズムとして準ニュートン法と最適制御理論を組みあわせて、地下2相流動の3次元逆解析アルゴリズムの構築を行い、高速、低計算容量の逆解析コードを開発した。これを用いて2次元断面モデル数値実験を行い従来の単相逆解析と比較することにより2相逆解析の有効性を示した。 室内実験では、乾燥試料と浸潤試料を用いてエアパルステストを行い、単相逆解析と2相逆解析により実験データを良く説明する浸透率分布を得ることができた。 原位置試験データとして浅部飽和領域におけるハイドロパルステストデータを用いて2相流動逆解析を試み、単相逆解析との比較を行った。その結果、2相逆解析は実用的な計算量で圧力データを適度にマッチングし、単相逆解析結果とは異なる物性分布が得られることが示された。 圧力値と圧力時間変化率を同時に自動マッチングする単相逆解析アルゴリズムを開発した。また、2相逆解析における圧力時間変化率マッチングの可能性を理論的に示した。 計測データの質と量を評価し、さらに逆解析における各種設定条件の妥当性を評価するために、逆解析結果の信頼性を定量的に表す方法として逆解析結果の推定精度および信頼区間を求める方法を開発し、簡単な数値実験(1次元単相モデル)を行い、計測法や逆解析モデルの妥当性に関して定量的な評価ができることを示した。
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