高日照による光阻害は生育遅延および収量の低下に帰結する。マカロニコムギには高日照ストレス耐性が必要である。光化学系IIのLight harvest complex(LHCII)のサイズを小さくすることが光阻害を回避する方法の一つである。クロロフィルa/b比はLHCIIのサイズと負の相関関係にあるので、クロロフィルa/b比に関する選抜によって、高日照ストレスへの耐性遺伝子型を選抜できる。1.59系統のマカロニコムギのクロロフィルa/b比を評価し、クロロフィルa/b比について上位3系統と下位3系統を選んだ。葉面積当たりクロロフィル量には系統間差異はなかった。これらのクロロフィルタンパク質複合体の変異の認識とダイヤレル分析による遺伝的パラメーターを推定した。2.Altai80とVallelunga glabra(V.glabra)の間のF_2および両親系統から広義の遺伝率をもとめた。クロロフィルa/b比の遺伝率は0.772、電子伝達活性(ETR)の遺伝率は0.251、およびクロロフィル量当たりETRの遺伝率は0.318であった。F_2(280個体)のクロロフィルa/b比分布の両端から高低両方向に30個体ずつ選抜し、それぞれについて30個体のF_3を育成した。選抜差による狭義の遺伝率の推定値は0.179であった。3.クロロフィルa/b比とETRの関係を検討した。F_2(280個体)から36個体をランダムに選び、ETRの光反応曲線およびクロロフィルa/b比を求めた。高クロロフィルa/b比の個体群からは高いETRが得られるとは限らないが、低クロロフィルa/b比の個体群からはETR値の低い個体も高い個体もみとめられた。4.Altai 80xV.glabraの後代から単粒系統法により育成した66系統のRandom inbred linesのETRとクロロフィルa/b比を求めた。ETRとクロロフィルa/b比との間の相関関係はなかった。葉面積あたりクロロフィル量がETRに関わっている可能性がある。5.今後はさらに多くのSSD系統を育成し、より強い光条件でETRを測定する必要がある。
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