ハナショウブの青色花およびその成分に関する新しい育種法を確立するために、本研究では青色花を発現するのに鍵となるアントシアニンであるdelphinidin3RGac5Gのメチル化に関する遺伝分析並びに花の青色化機構の解明を行った。得られた研究成果の概要は以下の通りである。 (1)ハナショウブにおけるdelphinidin3RGac5Gのメチル化は単一遺伝子の関与によるものであり、メチル化遺伝子(Mt)は非メチル化遺伝子(mt)に対して優性であった。 (2)ハナショウブの主要アントシアニンであるmalvidin3RGac5G、petunidin3RGac5Gおよびdelphinidin3RGac5Gはいずれも主要フラボンであるisovitexinの濃度を高めていくと、溶液のλmaxは明らかに波長長側にシフトしており、各アントシアニンがisovitexinとの間にコピグメント効果を有していた。また、malvidin3RGac5G-petunidin3RGac5G-delphinidin3RGac5G-isovitexin混合液の吸収スペクトルは、malvidin3RGac5G-petunidin3RGac5G型の青紫品種「水天一色」、「碧海」および「夜光の珠」の新鮮花弁における吸収スペクトルとよく類似していた。従ってこれらの品種における花弁の青色化は主としてmalvidin3RGac5Gおよびpetunidin3RGac5Gとisovitexinとのコピグメンテーションによるものと結論づけられた。 (3)in vitro コピグメンテーション実験は、λmax およびΔλmaxともmalvidin 3RGac5G およびpetunidin 3RGac5Gよりもdelphinidin 3RGac5Gとisovitexinとのコピグメント効果が最も高いことを示した。
|