平成10年度は主にイネのセシウム抵抗性突然変異系統(CSR)の特性をM4世代の植物について調査した。 得られた6系統の幼植物はすべて野生型(日本晴)が生育できない50μMの塩化セシウム溶液中でも生育可能であったが、CSR系統間でセシウム抵抗性に関して差異が認められた。また、CSR系統と日本晴の幼植物におけるセシウム吸収を調べたところ、CSR系統はすべて日本晴より吸収速度が小さいこと、セシウム吸収にも差異があることが明らかになった。以上のことから、得られたCSR系統は複数のタイプに区別できることがわかった。 CSR系統の一部に種子が正常よりも球形化していることが認められた。CSR23ではすべての種子が球形化しており、他の3系統においてはM3で個体別採種して得られたM4系統の一部で球形化種子が分離していた。この種子の球形化をもたらす遺伝子とrk遺伝子との関係は現段階では不明であるが、セシウム抵抗性遺伝子のマッピングを行う際の有力なマーカーになりうると考えられる。 セシウム抵抗性遺伝子が根のイオン吸収に関係していると推測されることから、根に発現する遺伝子について突然変異体と日本晴の比較を簡易ディファレンシャル・ディスプレイ(DD法を用いて行った。その結果、一部のプライマーを用いた時に、突然変異体に特異的なPCR産物が確認できた。この結果をもとに、DD法によるCSR系統の分類、PCR産物からのセシウム抵抗性遺伝子のクローニングを行う予定である。
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