研究概要 |
まず,ABAがイネの登熟に及ぼす影響を穂上位置別に検討した.品種ササニシキを用い,昼/夜温が24/19℃,50%の遮光条件下で実験を行った.出穂期およびその1週間後にABAを茎葉散布した結果,10^<-7>M付近の低濃度処理により,登熟歩合が増加し,収量も増加した.最終粒重は,強勢な頴果では変わらなかったが,弱勢な頴果で増加したので,処理による登熟歩合の増加は弱勢な頴果の粒重増加によることがわかった.また,処理により弱勢な頴果の初期生長は促進された.次に,開花1日後,3日後の2回,弱勢な頴果にABAを直接処理した結果,低濃度側で最終粒重の増加や初期生長の促進が,また高濃度側では最終粒重の低下や初期生長の遅延が観察された.サイトカイニンであるzeatinを登熟期のイネの水耕液に投入すると,弱勢な頴果に対してのみABAと同様な促進効果が見られた.これら両者の促進効果はsource/sink比を高めるような処理と同様であることから,ABAやサイトカイニンがイネ自身の登熟制御の促進要因として働いている可能性が示唆された.したがって,イネ頴果のABAやサイトカイニンを分析する必要があると考えられた.そこで,生長初期の頴果のABAやサイトカイニンの分析法を検討した.穂上位置を固定し,生育の揃った頴果を多く採取することは困難であるため,試料が微量でも分析可能なELISAにより最終的に分析することにした.抽出液を簡単なODSミニカラムを通すことにより,zeatin, zeatin riboside, ABAを高い回収率で分離,回収することができた.また,夾雑物も十分除かれること,試料は2〜4粒で分析可能であることがわかった.
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