葉の老化を抑制し、葉が長い間高い光合成速度を維持することは、作物生産の向上にとってきわめて重要である。土壌水分が減少し、水ストレス状態におかれると作物の葉の老化は急激に進む。本研究はトウモロコシを用いて土壌水分低下によって促進される葉の老化を根の機能に着目して検討し、以下の成果を得た。 1.低土壌水分条件に生育するトウモロコシの葉の老化は湿潤土壌に生育するトウモロコシに比較してはやく進み、この傾向は下位の葉で顕著であった。 2.低土壌水分条件に生育するトウモロコシは、湿潤土壌に生育するトウモロコシに比較して茎基部からの出液速度が著しく小さかった。 3.トウモロコシ茎基部から採取した木部液に浮かべたトウモロコシ葉片のクロロフィル含量の低下は水に浮かべた葉片に比較して小さかったことから、根から地上部に送られる木部液には葉の老化を抑制する作用があることが推察された。 4.湿潤土壌に生育しているトウモロコシの茎基部から採取した木部液を低土壌水分条件に生育し、老化の進行しているトウモロコシの茎基部に注入した結果、水のみを注入したトウモロコシに比較して生葉数、葉のクロロフィル含量、光合成速度の減少程度が小さく、葉の老化が抑制されることがわかった。 5.根の木部液中にはサイトカイニンや窒素など葉の老化を抑制すると考えられる物質が含まれている。土壌水分が低下すると地上部に送られるこれらの物質の量が減少することが葉の老化の促進と関係していることが推察された。
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