昨年度の実験において、ラッカセイ(品種:ジャワ13号)にAgrobacterium rhizogenesの国内産野生菌株MAFF02-10266系統を胚軸接種することによってcomposite plant(地上部は非形質転換体であるが地下部は供試野生菌株のrol遺伝子が導入された合成植物)を作出した。本年度はこのcomposite plantにおける根粒菌の感染過程と着生根粒の特性を組織学的に観察した。また、培地中の窒素化合物が根粒着生や窒素固定活性に及ぼす影響を解析するために子実肥大期までの水耕栽培法を試み、器官別の窒素化合物の吸収量について検討した。結果の大要は以下の通りである。 1.composite plantでは、根量は対照個体に比べて明らかに増大し、高いフラクタル次元(D)を示し、分枝根の発生が旺盛であった。根粒は対照個体と同様に分枝根の発生基部にのみ形成されたが、組織学的な観察によって対照個体における非分裂型根粒とはやや異なる分裂型根粒が認められた。培地中の硝酸濃度は根粒着生を阻害したが、両者における根粒感染機構には明確な差異は認められなかった。 2.子実肥大期まで水耕栽培を継続するために塩ビ製皿に砂を充填した結莢圏を水耕装置に設置して栽培したところ、莢の肥大が認められた。本装置を用いることでラッカセイにおいて培地中の窒素化合物の影響を水耕栽培によって生育後期まで検討することが可能であることが示された。現在、composite plantと対照個体を本水耕装置で生育させ両者における固定窒素量の評価ならびに各器官への分配に関して実験を遂行中である。 3.2年間にわたる研究において、ラッカセイにおける毛状根由来植物の作出には至らなかったものの、上述のcomposite plantを作出し、また生育後期までの水耕実験の系を確立した。これらの系を利用して、ラッカセイにおける根粒菌の感染、根粒の発達、窒素固定活性の発現に至る過程の窒素化合物による制御機構に関する解析をさらに進めていく予定である。
|