平成6年度科学研究費補助金(一般研究(C)(萌芽):06806002「マメ科作物根粒金の新たな感染経路構築の試み」)において試みたAgrobacterium rhizogenesの感染によって誘導したラッカセイの毛状根の特性(分枝根の旺盛な発生と密な根毛の形成)を利用して根粒菌の感染から根粒の発育、窒素固定活性の発現における硝骸態窒素による制御機構を解明することを試みた。結果の大要は以下の通りである。 1.ジャワ13号にA.rhizogenesの国内産野生菌株MAFFO2-10266系統を胚軸接種することによってcomposite plant(地上部は非形質転換体であるが地下部は供試野生菌株のrol遺伝子が導入された合成植物)を作出した。このcomposite plantの根系と根粒菌の感染過程および着生根粒の特性を観察した。composite plantの根量は対照個体に比べて明らかに増大し、高いフラクタル次元(D)を示し、分枝根の発生が旺盛であった。根粒は対照個体と同様に分枝根の発生基部にのみ形成されたが、組織学的な観察によって対照個体における非分裂型根粒とはやや異なる分裂型根粒が認められた。培地中の硝酸濃度は根粒着生を阻害したが、両者における根粒感染機構には明確な差異は認められなかった。 2.培地中の窒素化合物が根粒着生や窒素固定活性に及ほす影響を解析するために子実肥大期までの水耕栽培を試み、器官別の窒素化合物の吸収量について検討した。子実肥大期まで水耕栽培を継続するために塩ビ製皿に砂を充填した結莢圏を水耕装置に設置して栽培したところ、莢の肥大が認められた。本装置を用いることでラッカセイにおいて培地中の窒素化合物の影響を水耕栽培によらて生育後期まで検討することが可能であることが示された。今後引き続き、composite plantと対照個体を本水耕装置で生育させ両者における固定窒素量の評価ならびに各器官への分配に関して実験を遂行する予定である。 3.2年間にわたる研究において、ラッカセイにおける毛状根由来植物の作出には至らなかったものの、上述のcompositeplantが作出され、また生育後期までの水耕実験の系を確立することがでさた。これらの系を利用して、ラッカセイにおける根粒菌の感染、根粒の発達、窒素固定活性の発現に至る過程の窒素化合物による制御機構に関する新たな解析手法の導入が可能となった。
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